1 自然の概説
(1)地形
有峰は、富山県の南東部、上新川郡大山町に位置する。薬師岳の麓、常願寺川支流の和田川、小口川及び真川の3流域に広がり、その大部分は、和田川流域に属している。
和田川流域には、面積5.12kuの有峰湖がある。これは、昭和36年に完成した北陸電力有峰ダムによって和田川が堰きとめられて生まれた人造湖である。
この流域は、有峰ダムを境として著しく異なった地形をなしている。上流部は、有峰湖を中心に、周囲を山で囲まれた標高1,000mの傾斜の緩やかな高原盆地を形成している。一方、下流部は急峻な峡谷となっている。
また、小口川、真川の両流域は、和田川下流部同様、急峻な峡谷となっている。
(2)地質
有峰の地質は、飛騨片麻岩類と花崗岩類、それらに不整合で接する中生代手取層群によって構成されている。飛騨片麻岩類と花崗岩類はダムや折立より下流の和田川、小口川、真川流域に分布、手取層群は有峰湖周辺から真川上流域に分布している。なお、跡津−大多和−折立峠−真川を通って跡津川断層が走っている。
(3)気象
有峰の気象は、富山市内と同じ温帯季節風地帯の日本海型の気象パターンを示し、夏期と冬期に降水量が多い。また、平成8年から平成12年の気象状況を見ると、平均気温は7.9℃と富山市内より約6℃低く、夏は涼しく冬は厳しい気象であり、年間平均降水量は2,628mmである。
初雪は平均では11月9日で、終雪は4月26日であり、また積雪期間は11月12日から翌年の5月3日までである。最深積雪は、最高413cm、最小216cm、平均322cmである。
(4)動植物
有峰の植生は、樹高や胸高直径の大きな、ブナ群落、ミズナラ群落、オオシラビソ群落、クロベ群落などの良好な天然林が広く生育していることで特徴づけられ、これらは美しい森林を形成している。
また、哺乳類、鳥類、魚類、昆虫、土壌動物等多様な動物が生息しており、希少種も数多く確認されている。
2 特徴 優れた生態系が広がる有峰
有峰には、優れた天然林が広がっており、湖、背後の薬師岳と調和し静寂さが保たれている。まさに、自然と人間が作った森林美であり、昭和48年に有峰県立自然公園に指定されている。
和田川の有峰ダム流域は、傾斜の緩やかな高原の盆地であり、その気候は、湿度が低く内陸的である。そこには、シラカバ、カラマツなど優れた内陸的な森林が広く分布している。これらの森林は二次林で、かつてここに生活していた人々が森林と関わってきたことを今に伝えるものである。
また、尾根筋には、オオシラビソ、コメツガ、クロベの針葉樹が、斜面には、ブナ、ミズナラといった広葉樹が、そして谷筋には、トチノキ、サワグルミといった広葉樹が生育している。このように、尾根の針葉樹林、谷の広葉樹林が、規則的に織り成す豊かな景観を形成している。さらに、有峰林道沿線には、折立の薬師岳登山口のミズナラ、東谷キャンプ場のカツラ、猪根遊歩道のブナなど、有峰の生き証人のような巨木が姿を見せている。
植物相は豊かで、多雪の影響を受けた日本海要素の植物も見られる。環境省の自然環境保全調査では、クロベ群落、シラカバ群落が、特定植物群落に指定されている。
また、有峰では、天然林と有峰湖が一体となった優れた生態系が確保されていることから、多種多様な動物が生息している。
哺乳類としては、ツキノワグマ、カモシカ、ヤマネ、テン、ニホンザル、モモンガなど
鳥類としては、クマタカ、ホトトギス、キビタキ、オオルリ、コマドリ、キセキレイなど
魚類等としては、イワナ、モリアオガエル、ヒダサンショウウオ、ヤマサンショウウオなど
昆虫としては、ギフチョウ、オオチャイロハナムグリ、ミヤマクワガタ、クジャクチョウなど
このようなことから、有峰は、調査研究の貴重な地域であり、野生生物の宝庫である。