第8回 有峰俳句の会

〔講師吟〕

夏山や土に打ち込む靴の音       中坪 達哉

老鶯の声もサシバを恐るるや        同

木下闇続けば時を遡り           同

渓川の流れ涼しく身を抜けて        同

〔入選〕

立山の有り幾度も          太田 硯星

万緑や有峰の気を総身に          同

夏霧や朝には朝の湧きやうに        同

夏わらび息ととのへて待つとせむ    菅野 桂子

せせらぎの涼しき音を聞き分けて      同

足首に夏川の水冷たすぎ          同

秋のこゑ朽ち木の苔の辺りより     石黒 順子

早き瀬に足絡ませて山の夏         同

爽やかや木の香の部屋に目覚めゐて     同

釣舟草花の震へも沢の風        大井 孝行

木洩れ日の坂をゆるりと登山靴       同

渓風の継ぎ目を飛ぶや岩燕         同

夏草にひそむは兎まりこぼれ      金森める子

腰下ろす大いたどりの葉陰かな       同

真川夏石に踊りて渡り行く         同

の泥吹き分けてタゴガエル          平井 弘美

樹の洞を覗けば深し木下闇         同

春ならば分け入る林独活の花        同

夏雲へ点となりつつサシバかな     内田 邦夫

落したる帽子拾えば汗の滲む        同

羽乾き手足動かす蟻となり         同

木の椅子に句帳湿りて晩夏かな     明官 雅子

姫女?みづうみまでの道とほく        同

真昼間の翅ひしひしと夏の蝶        同

夏惜しむ三千尺の地に立ちて      練合 澄子

遠き日の匂ひの中を草いきれ        同

見晴るかす青嶺も湖もとの曇り       同

青き実の空見上げれば夏の雲      新井のぶ子

ばーそぶじーそぶ連れ添うて夏もゆく    同

振り返る折立の径赤とんぼ         同

大蟻の立ち止まりては回り道      栗島くり子

川原石飛んではずんで風涼し        同

敷きつめし川原の石を素足跳ね       同

万緑を切り分ける導水管         木本 彰一

早き瀬を裸足で跳ねてに戻る        同

山々を墨絵のごとく朝霧は         同

古希遊歩十五の夏はザラ峠       澤田 宏

杖ついて殿を行く夏木立            同

登山口鈴の音遠くなりにけり        同

長靴にわたる夏川心地よし       羽座 千敏

腐葉土をふんわりと踏む登山靴     水野 博之

うぐいすの鳴き声聞いてまた一歩      同

せせらぎの絶ゆることなしところてん    同

蟻追えばコナスビの花咲いており    矢野 昌子

丸太橋渡る先には独活の花         同

夏霧の林道ゆけば花白し          同

木々の中風の風鈴鳴り響く       山本 章広

種なりて桧扇の花いずこへか        同