〔入選〕

湖青く秋思浮かぶる術もなし           室井千鶴子

爽やかや流れ渡るに手をつなぎ            同

湖畔の風千草に色をくばりゆく          成重佐伊子

杖の先おんぶ飛蝗をおどろかす            同

息ついで沢音親し紅葉山             太田 硯星

色もよき小石を拾い秋惜しむ             同

朴落葉尻にかき寄せ待つとせむ          菅野 桂子

澄む秋や一行歌ふ川向こう              同


くちづけもいのちの沢の秋水に          境田 芳雄

秋思わく狛犬の塔撫でをれば             同

谷紅葉雲の白きにおどろけり           山下 正江

酸っぱさに今日の目覚めや山ぶだう          同


白蛇めくいのちの沢や秋気澄む          新村美那子

荒寥の真川や山の粧ひて               同

みづならの実生あまたや踏むなかれ        舛田としこ

しばらくはひとりの時間野紺菊            同

腰下ろす石を探して水の秋            平井 弘美

山ぶだう紅葉して湖輝きぬ              同

幾億の結び葉ゆらし風も秋            金森める子

流るるも合い分かれして秋の水            同

湖の色変わる雲間や秋の声            澤田  宏

一病に薬師岳おろがむ霧襖              同


不作てふ山々を熊巡れるや            東海 幸子

川渡る秋の光のきらめきに              同

川音に色づく楓谷深し              犬島荘一郎


少しづつそして一気に秋深む             同

山の秋伐りし庭の木懐かしむ           山澤美栄子

水の秋句も絵もならず立ち尽くす           同

枯葉ふみ地の温もりを頂けり           有馬みどり

幸せを絵にしたるごと水の秋             同

病友に紅葉の便り書くとせん           上原 孝子


枯すすきとてしつかりと立つてをり          同

第12回 有峰俳句の会

〔講師吟

引く波の音は聞こえず秋深し      中坪 達哉

あかき実も風に澄みゆくばかりなり    同

一句目 平成26年10月 9日 冷タ谷、西谷、西谷いのちの沢に於いて

二句目 平成26年10月10日 真川に於いて            各一句づつ