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有峰村民の皆様と、双方向で交流するメールマガジン
有峰森林文化村新聞 2021年2月26日 第457号
編集/有峰森林文化村会議 編集長/吉江 良
(発行日現在の有峰村民人口:1,283人)
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━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆令和2年度 有峰のクマ対策について          有峰森林文化村
編集局からのお知らせ                有峰森林文化村

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令和2年度 有峰のクマ対策について          有峰森林文化村 
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1.はじめに
 有峰地区では、令和元年の夏ごろから多くのクマが出没するようになりま
したが、令和2年度は、春先入山直後からクマの姿を頻繁に見かけるように
なり、9月中旬頃まで、平均で1日に1回以上の頻度で目撃されるようになりま
した。このことから、以前に比べると、クマの個体数そのものが増加してい
ることも考えられます。
 
 これをふまえ、有峰地区では令和元年度より、窓口での普及を中心とした
対策を行って参りました。
 一方、折立地区では、都市部の方々など、不特定多数の入込による食料残
渣の放置等が主因となり、クマの人慣れした行動が見受けられたことから、
巡回等の対応を行ってきたところです。
 今回は、これら取組んできた対策の内容と、昨年8月に折立で発生した駐車
中の車の被害等について報告いたします。

2.令和2年度に取組んだクマ対策の内容
(1)熊対策緊急会議の開催
 まずは、住民(管理事務所、有峰ハウス、有峰記念館)全員での取組の合
意形成を図るため、昨年に引続き6/18に熊対策緊急会議を開催し、以下の内
容に取組むことを決定しました。

(2)来訪者への普及活動
 ①普及パンフレットの配布・説明
  各窓口(ビジターセンター、記念館、ハウス、林道連絡所)において、
 来訪者に対し、パンフレットを配布(可能な限り口頭で説明)し、下記内
 容の注意喚起を実施した。
  ア.遭遇防止 
  イ.遭遇した場合の対処法
  ウ.誘因防止(食料残渣の放置禁止)
 ②注意看板の設置
  観光客が立ち寄る主要な箇所(窓口、駐車場、トイレなど)20カ所に設
 置した。
 ③出没状況マップ等の掲示等
  クマの出没状況をマップに落とし、ビジターセンターで掲示した。
  またクマの残した痕跡を展示し、食品残渣を残さないことの重要性を普
 及した。

(3)折立キャンプ場周辺の巡回・清掃
 不特定多数が訪れる折立地区を巡回(土日を主に週3回程度実施、繁忙期
は毎日実施、2人1組)し以下の内容を実施した。
 ①キャンプ場や駐車場で宿泊・食事をしている方へ、PRパンフを配布し
 普及活動を行った。特に、有峰はクマの生息区域であり、人間がクマにと
 って特別な環境を作らないようにする(クマと人間の適切な距離を取る)
 ことが大切であることの理解に努めた。
 ②キャンプ場周辺に放置されている生ゴミ等を回収した。(特に駐車中の
 車の下にゴミの放置がないか重点的に確認をした)
 ③キャンプ場及び駐車場を農業用電気柵で囲った。

(4)その他(村内施設での対応)
 ①生ゴミ・空き缶等の放置禁止を徹底した。
 ②宿舎等への侵入防止対策を徹底した(戸締まり、使用頻度の低い窓の
 雪囲設置)。
 ③万が一の撃退対策の準備をした(クマスプレー、爆竹・バット)。
 ④宿舎に近づいた場合のみ威嚇行為を実施した。

3.折立駐車場近辺で発生した被害の状況
(1)人間の食料を狙った連続被害の発生
 このような中、夏休みに入り、登山客が急増してきた時期でもあり、
折立では以下のような被害が連続して発生しました。
 ①登山客が車から荷下中に、クマにクーラーボックス等を林内に引きず
 りこまれた。
 ②登山口で休憩中の登山客が、リュックをクマに持っていかれた。
 ③登山口の自販機のゴミ箱がクマに荒らされた。
 ④駐車場で食事中、小熊に襲われそうになった。
 ⑤キャンプ場横の高木にクマ2匹が登り鳴き声を発した(キャンプ場の
 炊出の匂いに耐えれなくなったと思われる)
 
 このようなことが連続して発生したため、人身被害発生の危険性がある
と判断し、次の対応を行いました。
 ア.キャンプ場の一時閉鎖・・・宿泊は車内で行うよう周知した
 イ.自販機のゴミ持帰
 ウ.駐車場内での行動に対する注意の強化(特に食事中)
 エ.キャンプ場エリアに電気柵を設置
 オ.爆竹の適時使用

(2)車両被害の発生
 このような対策をとっていた中、8/22夜に、「駐車中の車の窓ガラスが
壊され、車内が荒らされる」といった被害が発生しました。幸い車の持ち
主は登山中であったため  人身被害はありませんでした。
 被害発覚当日は警察の現場確認があり、新聞でも報道されました。
 クマは少し開いていた窓ガラスに爪をかけ、割って中に侵入したようです。
 
 このため、上記対策に加え、以下の対応をとりました。
 カ.車の窓をしっかり閉め、車内に食料やゴミは残さないことを周知した。
 キ.巡回時にこの被害状況を写真で説明した
 ク.駐車場山側に電気柵を設置した。

(3)学習が進んだ熊の捕獲検討
 このような連続した被害が発生したことから、普及による周知では限界が
あると考え、熊を捕獲し学習放獣することを検討しました。9月上旬に自然
保護課職員・富山市担当課職員・地元猟友会会員ほかの方々とともに現地で
立会し協議を行いました。
 
 しかしながら、昨年同様、この時期になると、樹木に実がなり始め、熊は
それを追ってか、全く人前に出没しなくなってしまいました。また9月に入る
と登山客も急速に減ってきている状況でもありました。
 このことから、捕獲は次年度春に持ち越すことといたしました。
 
4.今後の取組方向について
 有峰ではクマによく出会いますが、クマから人間に近づくことはあまりあ
りません。里山で怖々降りてくるクマと違い、ここは僕たちの住処ですとい
った自信があるからか、無意識のうちに人間とクマの棲み分けがされている
ようにも感じられます。
 
 一方、折立地区は登山を目的に都市部の方々が一度に大勢訪れる有峰でも
特別な箇所です。中には食べ残しを捨てて行かれたり、テントの中に食料を
残したまま留守にしたりというケースも多く見られます。クマの餌はドング
リ類ですが、栄養豊富な人間の食べ残しが簡単に手に入ると分かれば、学習
し、繰返しの出没となることは避けられません。
 
 このような状況から、まず大切なのは、訪れる方々に「ここはクマの生息
区域であり、クマと人間が適切な距離感を持って過ごすこと」が必要であり、
「むやみに近づいたり、食べ残しを捨てたり、餌付けしたりすること」が無
いように、来訪者への十分な普及を行うことが先決であると考えています。
 
 そもそも「クマ対策に正解」はありません。それは、場所により「クマの
意識」も、「人間の生活スタイル」も変わるからと考えます。
 ある観光地では、クマが頻繁に出没した場合、人間の入場を制限する措置
を取ることもあるそうです。ではクマが出たからと言って、有峰林道を通行
止めに出来るでしょうか?
 またある観光地では商業施設が多く立並び、人の入込みが多いため、人身
被害を避けることを第一に考え、クマの罠を多く仕掛け、捕獲し、学習放獣
や射殺を行っているとも聞きます。有峰の今の状況で次々にクマを捕らえ射
殺することまでも検討できるでしょうか?
 このようにその場所毎の置かれた状況により、対応は全く異なることが分
かります。
 
 今後有峰地区では、学習の進んだ折立地区の一部個体の学習放獣を行うこ
とを検討しながら、今後も訪れる方々に、まずは「よくニュースになる里山
に出没するクマとの違い」や、「人間との適切な距離を確保する重要性」等
について、さらなる普及に努めていきたいと考えています。
 
 これにより、今後も有峰地区全体が、クマにとっても、人にとっても、よ
り幸せに暮らせる場所(共存できる場所)で有り続けることを祈ってやみま
せん。

    クマ対策緊急会議      普及パンフレット           クマップ


  
折立巡回状況      折立駐車場で回収されたゴミ   管理事務所付近に出没したクマ 
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◆編集局からのお知らせ                有峰森林文化村
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次号の有峰森林文化村新聞は、3月19日に発行予定です。
 6月~11月間は二週間毎に、12月~5月間は月1回、第3週の金曜日に発行い
 たします。
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                     有峰森林文化村助役(編集長)
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