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有峰村民の皆様と、ほぼ2週間に一度、双方向で交流するメールマガジン
有峰森林文化村新聞 2010年9月4日 第215号
編集/有峰森林文化村会議 編集長/羽座千敏
(発行日現在の有峰村民人口:708人)
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━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆オレゴン有峰往復書簡第93回目 有峰からオレゴンへ 中川正次
〜五月雨の猪根山遊歩道五月雨の猪根山遊歩道 〜
◆有峰村民によるリレーエッセイ第1回
 「森の芸術学校〜一度きりの子ども時代に〜」
               富山森のこども園隊長 藤井徳子
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◆オレゴン有峰往復書簡第93回目 有峰からオレゴンへ 中川正次
〜五月雨の猪根山遊歩道 〜
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 7月13日に、中坪達哉さん、石川たかねさん、田中洋さんと有峰に行きま
した。

 中坪さんは、有峰俳壇の監修者。石川さんは、気さくな主婦。田中さん
は、スポーツ用品店の店主です。

 中坪さんと石川さんは何度も有峰に行っておられますが、田中さんは初
めて。岐阜県丹生川村のお生まれで、小学校4年生まで高山市におられまし
た。

 店では、ウォーキングシューズやランニングシューズを売っておられま
すが、ずっと山には行ったことがないとのこと。「いっぺん、有峰に行き
ましょうよ」とお誘いしました。


 雨がこの日だけでなく、一週間ほどずっと降り続いていました。石川さ
んは、真川の河原に生えている「マガワハハコ」を愛着の森として定点観

測しておられますが、こんなに雨が降り続いているのに、真川の中に入る
のは、新聞ネタになる可能性大なのでパス。

 午前中、猪根山遊歩道を歩いて、午後は、中坪さんの「西谷いのちの沢」
の愛着の森をする計画でした。もちろん、西谷とて、「今日、富山市の有

峰で、中年の3人が、増水した川に流されました」とニュースされる可能性
があれば、引き返すつもりでした。有峰で遭難したのが、北電社員と県庁
職員では、シャレにならない。


 さて、猪根山遊歩道です。有峰ハウスの脇から歩き始めたのは、10時30
分。最初は、スギ並木ですが、100メートルも歩かないうちに、ヤマブドウ

やトチの林になり、急勾配が始まったかと思うと、おまちかね、ブナ林に
なります。ブナの林に入ると、雨は降り続いているのですが、たいしたこ
とはありません。


 先頭を歩いていた私は、橙色のカッパのフードをかぶっていました。し
かし、何かを説明しようと思えば、フードがじゃまです。自分の声が変に

聞こえますし、二人の返事や質問が聞き取りにくくなるからです。フード
を外すと、雨が顔や頭にかかるだけでなく、水が首から入り込んできます。
そんなこんなで、フードを外したりかぶったりを繰り返していました。

 今回の有峰行きは、吟行でもあります。作っても作らなくても、それは
自由です。私は、一句ぐらいは作りたいなあと思っていました。それで、

中坪さんに、「雨降るブナ林で、カッパのフードを外したりかぶったりし
ているということを俳句にしたいんですけど、五七五には短くならないし、

ブナでは季語にならないし、どうしたものですかねえ」と尋ねたところ、
「この雨は、梅雨の雨ですから、五月雨でいいでしょう。『さつき』とい

うと、ゴールデンウィークの頃のように思うかもしれませんが、旧暦では
梅雨時です。五月雨をあつめて早し最上川も、梅雨の雨を集めていたんで
す」と、答えられました。

 五月雨をフード外してブナの径  中川 正次

 「トモの木」を過ぎて、「源爺の樹」に近づくと、あたりは、樹の枝が
モール(トンネル)を作っており、葉っぱの黄緑と、落ち葉の茶色が雨に
煙っています。

 夏落ち葉小径の先の煙雨かな  石川 たかね

 「源爺の樹」を過ぎて50メートルほど行ったでしょうか、中坪さんが、
「どこかに樹幹流が流れていないかなあ」と言われました。ブナのまっす

ぐな幹をさーっと流れ落ちる雨水のことです。そのうち、道の左手を指差
して、「あった、あそこに樹幹流」石川さんが、道から1メートルほど入っ

て、樹幹流をさわりに行かれました。降りてこられて、今度は私が行きま
した。手ごろだったので、幹に舌をつけて樹幹流を飲みました。ぬるくて、
甘い。そのあと、田中さんも続きました。

 緑さす山毛欅に口付け樹幹流  中坪 達哉

 人がごちゃごちゃいる所には行きたくないとおっしゃる田中さんにも満
足していただけた有峰行きでした。丹生川村のことを思い出したと言って

おられました。ウォーキングシューズをお客さんに勧めながら、「有峰、
よかった」と言っておられることと思います。

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◆有峰村民によるリレーエッセイ第1回
「森の芸術学校〜一度きりの子ども時代に〜」
                 富山森のこども園隊長 藤井徳子
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 8月20日〜21日、冷タ谷キャンプ場で森の芸術学校の開校記念事業
“ネイチャーアートキャンプ”(富山森のこども園主催、赤い羽根共同募
金会および有峰森林文化村語り部講支援助成事業)を開催しました。

森の芸術学校というのは、「自然のなかで、子どもたちに本当の芸術を体
験させる」「大人のこども心を呼び覚まし、子どもたちとともに体験・感

動する」というコンセプトで企画された、通年で行う親子参加型の自然芸
術体験プログラムです。

4年前の冬、有峰森林文化村の助役をされていた中川さんが、ねいの里で
森のようちえんをしていた私たちに有峰のことを教えてくれたのが私と有

峰の出会いでした。以来すっかり有峰に恋した私は、森の学校を開くとい
う構想が浮かんだ時点で、やるなら有峰の森で!と決めていました。

 キャンプには幼児〜小中学生まで20人の子どもたちと、大人14名が
集いました。

最初のプログラムはアースウォーク。森林インストラクターで有峰森林レ
ンジャーでもある関原さんが先生です。「今日はみんなで森のおうちに帰

ってきました」ただいまぁ〜と落ち葉や土で手を洗って(!)始まりまし
た。森のスライドショーが見たくてチケットになる「カラフルな葉」を必

死で探したり、土の上に寝転んだり、森の「ねちゃねちゃ」や「ぷよぷよ」
がなかなか見つけられなくてあらゆるものに手で触れたり、みんなばらば

らに離れて一人静かに葉ずれの音や沢を流れる水の音に耳を澄ましたり。
子どもたちと五感を働かせるってこうすればいいのかぁ!とわくわくしま
した。

 午後はネイチャーアート。フラワーアーティスト牧野美恵子さん指導の
下、有峰湖や薬師岳を雄大なキャンバスに見立ててダイナミックな自然の

オブジェを作ろうというのです。イメージは「130万年前」。お父さんお母
さん4〜5人がかりで大きな流木をかかえて動かし、そこに形のおもしろ

い小枝をさすと立体的にさらなるスケール感が出てきました。最後はその
真ん中に、たくさんのひまわりを飾りました。子どもチームもその間、キ

ャンプ場の木立ちに草花で巨大なタペストリーを作り、みんなでせーの!
と持ち上げて天高く吊るしました。木漏れ日が差し込んでステンドグラス
のようにキラキラと輝いていました。

 夕飯はみんなでカレーライスを野外炊飯しました。はりきってかまどの
番をする男の子たち!包丁で野菜を刻むこびとさん!子どもたちだけでテ
ント設営してしまった男前な女の子たち!

 満腹になりすっかり日も暮れたら、焚き火コンサート。旅の音楽家丸山
祐一郎氏&こやまはるちゃんのジャンベを叩くアフリカのリズムに合わせ

てみんなで歌う。みんなのリズムと心が一つにバシッ!と決まった瞬間、
火の女神さまが舞い降りました。火を囲んで、森の木々に歌い、語りかけ、

丸山さんが奏でるさまざまな民族楽器を子どもたちもかわるがわる演奏し
ました。風の音がしました。

 2日目は真川へ。「こんなに美しい川があるのか!」と初めて来た人た
ちはみな感嘆しました。木立ちの中を流れるとびきり澄んだ川原で、丸山

さんに教わりながら「水カンリンバ」という楽器を作りました。冷んやり
とした川の中で、子どもたちは水しぶきをあげていつまでも遊んでいまし
た。

 さいごはもう一度冷タ谷に戻り、草花タペストリーの下で、また「130万
年前」のオブジェを囲んで、水カンリンバを演奏しながら全員一人ずつふ

りかえりをしました。「化石を見つけた!初めて月明かりをみながらテン
トで眠れたのがよかった」と1年生の女の子。「山で育った自分の子ども時

代を久しぶりに思い出しました。」とお母さん。昨夜熊が怖くて眠れない
と泣いていた女の子も「楽しいキャンプだった!」と誇らしげに言い切り
ました。

 キャンプ最初の開校式のときにみんなに言いました。「森の学校は普通
の学校と大きく違うところがあります。細かいルールがまったくないこと

です。自由に好きなだけ、好きなことをやってください。ただし、自分の
体(命)はしっかりと守ってください。」子どもたちはそれぞれに好きな

場所で、思い思いに遊び尽くすことができました。誰にもおうかがいをた
てることなく、まさに“自分が自分の主人になって”自由と自然と音楽を
満喫しました。

 今、子育て支援がさかんに言われます。子どもたちは「大人」と「もの」
という檻のなかで「安全」に囲われています。でも一番大切なことは、子
どもたちに自然を取り戻すことだと思います。

一度きりの子ども時代を生きる子どもたちの“今、このとき”を応援して
いきたいと思います。

Norichel Carsan(ペンネーム)

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