******************************************************************
ありみネット http://www.arimine.net/

有峰村民の皆様と、ほぼ2週間に一度、双方向で交流するメールマガジン
有峰森林文化村新聞 2010年1月23日 第199号
編集/有峰森林文化村会議 編集長/荻沢明夫
(発行日現在の有峰村民人口:685人)
******************************************************************
━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆オレゴン有峰往復書簡第79回目 有峰からオレゴンへ 中川正次
   〜不安な時代に、人を集める裏ワザ〜
◆有峰の一年 ―2009年編―  有峰森林文化村主任指導員 宮原 真樹
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
─────────────────────────────────
◆オレゴン有峰往復書簡第79回目 有峰からオレゴンへ 中川正次
   〜不安な時代に、人を集める裏ワザ〜
─────────────────────────────────
新年の挨拶をはじめとして、あらたまった挨拶は、「○○の限りない発展
とみなさまの健康を願って、私の挨拶といたします」というものが多いで
すけど、限りない発展など、とても信じられない時代です。

週刊朝日(2010年1月1日8日合併号)に作家の五木寛之さんと東大
教授の姜尚中さんの対談が載っています。その中で、五木さんが、2010年
を予感してみると、一瞬、小康状態の年になるのではないでしょうか。嵐
の前の静けさです。でもその後、暮れから11年にかけて、二番、三番の
大恐慌、大不安がやってきて、平安末期から鎌倉への変動のような大変な
時代が来るだろうと思います。戦後の預金封鎖や円の切り替えなどを思い
出しますね。と話し、姜さんが同感しています。

私も、そんな気がしてなりません。今日の危機は、二つに整理できるので
はないでしょうか。

一つは、山崎祐介さん(富山商船高等専門学校名誉教授)の言葉を借りれ
ば、「高エネルギー消費生活や環境負荷行為の継続を許されない」という
危機です。もう一つは、まじめにさえ働いていればなんとかなるという約
束事が崩壊しつつあるという危機です。

「地球にやさしい、環境にやさしい」を標榜して、楽な生活を続けようと
する企業がある一方、「従業員にやさしい」ことを掲げる会社は、あった
としても稀だと思います。環境や雇用の危機に対する不安が広がりつつあ
ることを思うと、森を見つめて自分を見つめなおすこと(有峰森林文化村
憲章第4条)を大切にしてきた有峰への期待に身が震えます。

NPO法人グリーンツーリズムとやまの本田恭子さんと話す機会があって、
「行事の中に、昼寝を入れたらいいですね」という話をしました。
http://www.arimine.net/annai/paper20091003.htm

すると、本田さんは、「私もそう思って、そんな旅行を用意して募集した
のですけど、人が集まりませんでした。盛りだくさんでないとダメです。
募集のメニューは、盛りだくさんにしておいて、実際にやるときは、さり
げなく、割愛して、昼寝タイム、のんびりタイムを作るという裏ワザが必
要なのではないでしょうか」

なるほどね、と思いました。旅館やレストランの食事メニューの写真を見
ると、たくさん料理がならんでいますね。だけど、実際にそれがテーブル
に置かれていることを考えると、そんなにたくさん食べることはできませ
ん。けど、写真はやっぱり、たくさん並んでいないとダメ。これと似てい
ます。難しいところです。

小杉さんのアメリカでのエコツアーの募集では、どんな工夫をなさってい
ますか?

─────────────────────────────────
◆有峰の一年 ―2009年編―  有峰森林文化村主任指導員 宮原 真樹
─────────────────────────────────
例年、林道開通は6月1日だが、今年は降雪量が少なかったせいか、5月
23日に開通する予定だった。だったというのは、22日に突然林道の崩
壊があり小見線が通行不能となり、予定の開通は遅れ6月6日に開通した
のであった。

それでも東谷線は予定とおり開通していたので、岐阜側から入ってくるこ
とはできた。ただし、富山からの所要時間は3時間あまりで、通常の2倍
以上の時間が掛かってしまう。

今年もビジターセンターから見た有峰昆虫相についていくつか紹介して見
たい。

5月の穴洞谷は、雪解けの水を集めミズバショウ、リュウキンカなど早春
の花々が咲きほこる。見頃は中旬である。今年は5月下旬ではあったが、
谷一面にミズバショウやリュウキンカが多く咲き、白や黄色の花々が咲き
ほこった。有峰林道が開通する6月にはすでに花の時期が終わり、ミズバ
ショウの大きな葉ばかりが目につき、雑草が生い茂り水辺に近づくことが
困難なほどとなる。

6月に入り天候の良い日には、猪根平一帯はギフチョウ、モンシロチョウ、
ヒオドシチョウが飛び交い、ギフチョウは1日10頭を数える日もあり、
この時期がギフチョウ観察の絶好の時期だろう。

ビジターセンター向かいの樹木園には、ギフチョウの食草であるヒメカン
アオイが多く生育し、ギフチョウの産卵を見ることができた。葉裏には真
珠色の卵が多数産み付けられていた。産卵した卵は6月20日ころから孵化
しだし7月15日前後にはすべて蛹となった。

道路上の灯火には夜ともなると早春の蛾類がやってくるが、今年は残念な
がら殆ど飛来してくる個体はなかった。ただ、エゾハルゼミは5月下旬か
ら鳴き声が聞こえ始めた。これは昨年よりは早いようだ。

昨年から始めた誘引剤を使っての衝突式昆虫トラップは、6月から猪根平
の林遍部に設置し昆虫相を調査した。昆虫はフェロモンという物質を出し、
雄雌のお互いの交尾を含めての交信に利用している。人工的にこれらの物
質を使って8月いっぱい、誘引される昆虫を調べた。誘引された昆虫はハ
エ類、ハチ類が多く、2年前に多数トラップに誘引されたカミキリ類やコ
メツキムシ類は、昨年も今年も全く捕獲されなかった。
このことから昆虫の種類によって毎年一定した発生に波があると思われる。

7月上旬から10月下旬まで毎晩ライトトラップ(灯火採集)を有峰ハウ
ス別館(旧有峰青年の家)横で実施した。7月の下旬にはクワガタ類が多
く飛来した。その多くはミヤマクワガタのメスで8月上中旬からはオスが
飛来するようになった。

灯火に誘引される昆虫としては一般的に蛾類が多い。蛾類の中でもシタバ
亜科のカトカラ類に関してはシロシタバ、オオシロシタバ、エゾシロシタ
バが最も多く、ベニシタバやオニベニシタバは殆ど来なかった。10月頃に
なるとクスサン、ヤママユの発生がピークを向かえ、昨年来多く見ること
ができたウスタビガ、クロウスタビガは殆ど来なかった。

7月12日、折立・真川に行く。真川上流の砂地で白い帯の比較的大きな蝶
が獣糞に吸汁している。写真撮影後、よく見るとオオイチモンジと確認。
震える手に帽子をもちそっとかぶせる。有峰での本種の確認は始めて。
幻の蝶として長く追っている方もいるらしく、簡単に採集できたのは強運
か。長野県では天然記念物、同好会の先生に、確認後、しばらく伏せるよ
う指示される。

7月18、19日に親子で有峰の自然を楽しむ"有峰わくわく自然探険"を実施
した。この行事のメインは虫捕りである。そのためにカブトムシの飼育を
行ったが、有峰のカブトムシの発生は例年8月下旬にピークを向かえるの
で、少々早いこの時期に合わせるため、幼虫の飼育は富山市内に移して、
成虫化を早めた。

また、7月中旬は、ミドリシジミ(ゼフィルス)の発生時期を向かえる。
林道周辺部では、ミドリシジミ類の雄がテリトリーを張りチラチラとエメ
ラルド・グリーンの羽をきらめかせて舞った。ゼフィルスたちの生きた芸
術を描く姿に自然探険参加者と共にしばし感動を覚えた。
観察されやすい場所としては、冷タ谷遊歩道南口周辺の林道上が良く、ジ
ョウザンミドリシジミ、アイノミドリシジミが今年もここで多く観察され
た。

7月下旬から8月に入るとこれらゼフィルスの舞う姿は少なくなり、エゾ
ハルゼミの鳴き声も東谷でわずか聞くのみとなった。

8月初旬、富山県の高校生が参加する、"ありみね高校生学びの森"を毎年
開催している。今回で第6回目となり高校生、講師の総勢50名の参加者に
よる2泊3日の宿泊体験学習を実施した。生徒と講師との合同生物調査で
動物・植物など多岐にわたる調査が1年(6月、8月、10月)を通して行
われた。

私は昆虫班に属し麟翅目、甲虫目などについて調査にあたった。
調査場所として大多和峠の峠谷で採集を試み、蝶類ではタテハチョウ類や
アゲハチョウ類などの夏季の蝶類を多く採集することができた。

夜間は、歩行性昆虫調査にベイトトラップを試みたところ、猪根平の林遍
部でゴミムシ類やクロナガオサムシなどが捕獲された。有峰ハウス別館で
ライトトラップに飛んでくる虫を食べにきたホソヒメクロオサムシを観察
したことは特筆すべき。

8月も終わりに近づくと、アサギマダラの渡りが始まる。自然博物園ねい
の里から毎年子供たちが調査にきている。今回も大勢の子供たちが蝶の羽
にマーキングし放蝶していた。過去、有峰のアサギマダラは沖縄まで飛来
したのを確認している。

数年前から増えてきたエルタテハの発生状況は、昨年より少なかった。
また、最近は同種の食草(カバノキ科)を食うキベリタテハは非常に少な
くなった。今年は全く確認していない。

10月に入るとライトトラップに、クスサン、ヤママユなどが集まるように
なり、10月いっぱい見ることができた。
個体数は、昨年よりずっと少なくヒメヤママユガやウスタビガなどはほと
んど飛来することはなく、甲虫類においても見られたように発生年に隔年
があるようだ。

11月上旬冷タ谷キャンプ場ロッジ壁面にメノコツチハンミョウが多数歩
行していた。

半年間の有峰の昆虫相を見てきた。有峰の自然は一見するとあまり変化が
見られないと思われるが、これら昆虫ひとつ見ても毎年大きく変化してい
る。
自然の底辺である昆虫類の変化は、その上流にある生物相に大きく影響を
及ぼすと考えられる。
この有峰においてもカシノナガキクイムシに起因するミズナラの被害を確
認しており、今後の拡大が懸念される。
これからも有峰の自然を調査していきたいと思う。

─────────────────────────────────
有峰森林文化村新聞は村民の交流の場として利用してください。
皆様からいただいた情報やご意見、感想を掲載しますので、どしどし投稿
ください。お待ちしております。
あて先は
info@arimine.net