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有峰村民の皆様と、ほぼ2週間に一度、双方向で交流するメールマガジン
有峰森林文化村新聞 2009年11月14日 第194号
編集/有峰森林文化村会議 編集長/荻沢明夫
(発行日現在の有峰村民人口:684人)
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━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆オレゴン有峰往復書簡第74回目 オレゴンから有峰へ 小杉礼一郎
  〜歴史とはなんだろう〜
◆有峰林道の閉鎖にあたって
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◆オレゴン有峰往復書簡第74回目 オレゴンから有峰へ 小杉礼一郎
  〜歴史とはなんだろう〜
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アメリカでは先週末(註:11月1日)夏時間から冬時間に切り替わり、時
計の針を一時間遅らせ(=戻し)ました。だから「夕方」がぐっと暗くな
り、まさしく秋の夜長の季節になりました。
この夏時間、正しくはday light saving timeというのですが、数年前まで
は今より始まりが一週間遅く、終わりも一週間早かったのです。だから本
当に「ああ、これから夏だな。」とか「もう夏もおわったなあ」という季
節感が伴っていました。ハロウィーンの時期にまで夏時間というのはピン
ときません。 
これを前後に二週間延長したのは子ブッシュ大統領でした。彼の政権が打
ち出した、ほとんど唯一といっていい地球温暖化対策です。なにせ政令一
つ発しただけで予算がいらないですからね。 

と、のっけから脱線しましたが、今回は夏時間のことを言いたいのでなく、
この秋の夜長にようやく貴方から送っていただいた本『有峰の記憶』を手
にする時間が出来たのです。
おそらく皆さんご存知の通り古文書もあり資料編もありの大変な力作なの
でまだパラパラと拾い読みしています。ですが実際に知る有峰の光景が思
い出され、つられて想像力が動き出してしまう、私にとってある意味、近
年にない面白い本です。改めて有難うございます。

どのページのどの記述からでも往復書簡の題材が出てきますね。有峰の道
の話や串田孫一氏のこと。天の夕顔、電源開発、ウレ村から森林文化村ま
での歴史等など。おもしろいです。実にいいです。

今後、いろんな話題をこの往復書簡に取り上げるでしょうが今回はもっと
も印象に残った言葉 ― 本ではなく、本に添えられてきた中川さんの手
紙の書き出し ― 「歴史とはなんだろうという思いをもっております。」
の一文にえらく共感したことをお伝えしたいです。

この一冊の本(というか文集に近い)を読めば読むほど ほんと「歴史っ
てなんなのだ?」という気がしてきます。題名が「有峰の歴史」でもなく
「有峰の記録」でもなく「記憶」としたのは篇者前田英雄さんの慮りと思
われます。もっともカバー表紙下部の帯風にしたキャッチコピーは本書の
内容にはひどく相応しくなく品がありませんが。

このごろは『限界集落』という言葉をよく目にします。特に高齢化云々で
なくこの言葉が使われ出した平成時代以前は文化人類学、経済学で自然要
因による生産力の限界地という意味合いで使われていました。そして有峰
はまさにそれを具現化した存在だったと思います。

中央アジア内陸奥地の山岳地帯では氷河から溶け出した水の量で人口が定
まった集落が幾つもありますし、アメリカ大陸の最北端の村バローの人口
も以前はその一帯で生息し獲れる海獣の数に拠りました。 

自然界に目を向けると、ありていに言ってしまえば生き物が生きる場所は
限界集落でない所はないということが言えます。  乱暴に言ってしまえ
ば王侯貴族や都市の一部の住民を除いて、近世まではある意味地球上のほ
とんどが限界集落であったといっていい。

仏陀もヒトラーもその見方を発想の原点として持っていました。到達点は
天と地のように隔たりますが。そして近代から現代にかけては、時間とヒ
トのあらゆる意味のパフォーマンスのバイアスがその「限界地」の姿を複
雑で捉えにくくしています。生き物としてのヒトならともかく、プラスも
マイナスもあるもののそのバイアスこそ人間としての人間らしさだと私は
思います。

もし、ダムが出来ていなかったら有峰の村落は現代どういう姿だったので
しょう?しかし、満々と水を湛えたダムは現実としてそこにあり村落はも
う無い。そういう道筋を辿った村落―岐阜県の徳山村―や、片やピンボー
ルの行方のように現在進行形で翻弄されている村もある。そういうことを
思うとき「いったい歴史とはなんだろう?」という素朴な思いが頭に浮か
ぶのはわかる気がします。

アラスカの先住民(エスキモーという言い方はもうあまりしませんが)は
最後の氷河期にユーラシア大陸からその当時陸続きだったアメリカ大陸に
渡ったモンゴロイドの人達の末裔です。だから我々日本人によく似ていま
す。

数年前の夏の終わり、目の前には北極海の黒い海が横たわるバローの集落
で一日ガイドしてくれた女性はどこか私の末娘に似ていました。別れ際に
ひょんなことから新田次郎の「アラスカ物語」の重要な登場人物の一人で
ある英国人チャールズ・ブロワーが彼女の曾お祖父さんであることを知っ
て驚きました。

単に驚いたというより、うまく言えませんが、自分の目の前で笑っている
女性と一万年余り途切れてこなかったのいのちの流れと自分とが私の頭の
中でバーンとつながったと思いました。なにがどうつながったかという理
屈でなく、それこそほぞ落ちです。その感覚の前には「歴史」という概念
はあってもなくてもいい位に軽くかすんでいました。

中川さんが歴史とはなんだろう?と思っていることは、有峰を介してそれ
を突き抜けたもっと大きな流れのようなものを見るとば口に立っているの
かもしれませね。貴方はそれを悟ることができるだけのことは積み重ねて
来た人です。私にとって有峰は故郷から遠く離れた私を、時代を越え故郷
に縫い付ける点のような気がしています。


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◆有峰林道の閉鎖にあたって
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今年の有峰林道は、土砂崩れのため6月6日(例年は6月1日)に開通
し、11月12日に閉鎖しました。10月7日からは有峰林道小見線が土砂崩れ
のため通行止となり小口川線のみの通行となり、多くの皆様にご不便をお
掛けし、申し訳なく思っています。これからも安全を最優先に林道管理に
努めてまいりますので、皆様のご理解・ご協力をお願いいたします。

有峰は、間もなく厳しい冬を迎え、動物たちだけの静かな世界となりま
す。今年の有峰はブナ、ミズナラが豊作で多くの実をつけました。私も初
めてブナの実を食べましたが、クルミとかカッシュナッツのような味で、
美味しかったです。熊たちも十二分に木の実を食べ、越冬することができ
ることと思います。来年の春には、新しい命が芽生え、私たちを新たな感
動の世界へ送り込んでくれるものと、期待で一杯です。

 有峰森林文化村としましては、多くの有峰ファンとともに、自然豊かな
有峰を守り・育て、次世代へ引き継ぎたいと思っています。有峰村民のご
指導・ご協力を心からお願いいたします。

 来年も、多くの皆様のお越しをお待ちしております。

<有峰森林文化村職員>

 荻沢 明夫  宮原 真樹  水野 博之  
 河原 芳博  藤森 清美  山本 章広

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