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有峰村民の皆様と、ほぼ2週間に一度、双方向で交流するメールマガジン
有峰森林文化村新聞 2008年11月15日 第168号
編集/有峰森林文化村会議 編集長/荻沢明夫
(発行日現在の有峰村民人口:650人)
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━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆オレゴン有峰往復書簡第48回目 オレゴンから有峰へ 小杉礼一郎
  〜雨の日というチャンス〜
◆「山森直清さんを悼む」 犬島 肇
◆有峰林道の閉鎖にあたって
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◆オレゴン有峰往復書簡第48回目 オレゴンから有峰へ 小杉礼一郎
  〜雨の日というチャンス〜
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こんにちは。
先週と先々週は中川さんはじめ皆さんに大変お世話になりました。
読者の方々に少し補足すると、10/19、20日の「どらやき会」(秋の有峰
の森を歩いてどらやきを食べる会です。補足になってない?)と 翌週
10/24、25、26日の「山じまいの集い」です。帰りの車中で中川さんに山
森さんのこと、より深いエピソードなども聞かせて頂きました。    
今、私はオレゴンでなく高岡でこれを書いています。秋の夜長、外の雨音
が心地よく心に沁み、私達と同じ時間を生きた人たちのことをつい物思い
しつつ。休みなく時は廻っていくのですね。有峰の麓でその時々の天与の
境遇を受けとめ邦に尽くしてきた山森さん。心は終生の青年士官であった
のだろうとのイメージが像を結んでいます。合掌。

さて、この記事が読まれる頃には合衆国の新大統領が決まっている(筈で
す)。オレゴン州は民主党の牙城ゆえ無論オバマ支持です。しかし世の中
の何がどうなろうとブッシュ政権のひどい失敗=世界中を落し込めた第二
次世界恐慌の時期を私達は避けて通ることはできません。誰もがこれから
必ずくぐり抜けねばらない。

10/24−山じまいの前日−はそんなことを思いながら私は一人湖畔の道を
砥谷半島に向けて歩いていました。長い秋晴れの周期が終わり前夜半から
の雨です。それは天気予報で知っていました。だから古い頑丈な傘を持っ
てきました。ビジターセンターで職員の方から「あいにくの天気ですね」
と慰めの言葉を掛けていただきながらの出発です。どちらかというと私は
晴れ男です。ですが仏の顔も日に三度。のべつまくなしに山や旅に出てい
る身の上にはそれこそ晴れ渡る日も雨の日もあります。別に「火もまた涼
し」的な境地に至ったわけではありませんが、いつしか雨の日をうとまし
く思うことはなくなりました。

前週のどらやき会は、あまりの好天続きで空には塵というか霞(英語でha
ze)がたっぷり上がっており全然遠目がきかなかった。有峰に入る前に立
ち寄ったとんがり山の頂からは快晴なのに富山湾は見えませんでしたもの
ね。だから今回は雨が降って(空中の塵が落ちてくれる。ラッキー)と思
っておりました。

山での雨は降り通しになることは少ない。緩急があります。そして上空の
雲が流れ、切れることがままあります。そこから見える空の蒼さ、一瞬に
射す陽の光。私はそれが大好きです。歩き出して間もなく猪根谷の辺りで
早速最初の晴れ間が通っていきました。黄金色のカラマツの葉先一つ一つ
に雫があり、小さなクリスタルのオーナメントのようなその一つ一つに陽
光が当たり煌きます。えも言えぬ美しさです。やがて猪根山が対岸に見え、
谷あいに残った雲の端が尾根に纏わり水墨画の構図のようになります。 
そして又、その墨絵の中をサーチライトのようにさぁーと光が射していっ
て楓や山葡萄の赤、ブナの黄葉がただただ美しい一瞬があります。折立遊
歩道を上り砥谷遊歩道を歩き紅葉を一人占めのそんな贅沢な時間を楽しみ
ました。その時に撮った何枚かの写真 ―濡れそぼった導水管と紅葉のコ
ントラスト、橙色のトンネルと化した折立遊歩道、路端のツタウルシの接
写など―も撮れました。それを翌日の「語り部講」で使ったら歓声が上が
りましたね。ああいう写真は晴れてから出かけていてはまず撮れません。
自然の女神が私達に微笑んでくれるその一瞬に居合わせること。勿論、運
に左右されます。けれども少なくとも雨の日でもその場に出かけていれば
こそのものです。

実は私がそのことを学んだ一枚の写真があります。芸術写真、とくに北米
の自然景観の写真の巨匠であるアンセル・アダムスが撮ったアラスカのマ
ッキンリー山(デナリ)の一葉です。この山は麓の氷河から山頂までの高
度差が5000mもあり、単体の山としてみるとそれは世界中のどの山よりも
大きいのです。これまでこの山の沢山の写真が世に出ていますが、木があ
る訳でもなく近景に街や人工物がある訳でもなく実際にこの山の大きさを
ダイレクトに感じさせる写真は今日でも稀です。

そしてこの山は天気が悪いのです。冬は最も悪いのですが、夏も悪い。夏
のアラスカは日照時間が長く、これがために海や陸水の蒸散が多くて雲が
湧く、雨か曇りの日がほとんどです。7月中の晴れは1〜2日しかありま
せん。アンセル・アダムスがマッキンリーを撮りに行った時も連日雨だっ
たと思います。山は全く見えなかっただろう。きっと一週間以上雨で麓の
テントに降り込められていたと想像できます。しかしある日一瞬雲の中に
山は姿を見せた。彼はその一瞬をすかさずカメラに捉えたのです。それは
構図のほとんどが雲ばかり、被写体は雲と言ってもいいほどの異色の写真
です。5000mの高さの雲というのは凄い迫力ですよ。その何層にも重なっ
た雲の最上部からうっすら片方の肩を出しながら、頂上の稜線がほんの少
し、しかしくっきり覗いているというものです。

夕立になる寸前の夏の入道雲を思い浮かべてください。その入道雲のてっ
ぺんを突き抜けて立っている白い山を。息ができなくなる位の迫力です。
 他の写真家が思いもよらないような写真をこうしてアンセル・アダムス
は残したのです。狙って撮れるものではありません。しかし「運だけ」と
誰にも言えない。そのほんの一瞬の運をガシと掴む天才の気魄でしょうか、

またしても話しが流れてしまいましたが、これから切り抜けて行かねばな
らない厳しい時代でも、やることとやれることはup-front、目の前にある
ということを言いたかったのです。自分自身への戒めを込めて。 
 
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◆「山森直清さんを悼む」 犬島 肇
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 前回の文化村新聞(167号)で掲載した中川正次さんの「オレゴン有峰
往復書簡第47回目」の記事を読んで、犬島肇さんから投稿が寄せられまし
たので、紹介します。
    
    
拝復
 中川さんの文章に私が二度も出てきました。つい、涙ぐみました。「山
森直清」の名は到底言葉巧みな表現をさせない、ある種の荘厳さ、威厳を
もって私の頭のなかを駆け巡ります。

 それは山森先生の青春が、国家と沖縄同胞の救抜に向けられ、あの世紀
の大海軍戦の敗北の後は、若い命を散華させた戦艦大和同僚の鎮魂と「有
峰」という類稀な霊峰とその自然を守るために費やされた人生の重みを感
じるからにほかなりません。

 戦争は人を、このような謙虚にさせるものであると思います。いや、小
さな小競り合い程度の戦闘では、生存すると手柄話に陥るのが関の山、し
かし乗組員の90%が死去、しかも9.11テロとほぼ同数の人間が僅か二時間
程度で死ぬという大激戦を経たとあっては、そこに見た阿鼻叫喚の地獄は、
まさに生き残った人間の運命を根本的に変えてしまうものなのだろうと思
います。

 中川さんに「犬島先生、吉田満の『戦艦大和ノ最期』に登場する山森中
尉が亀谷に存命ですよ」と電話で知らされた日の驚きは今もって忘れられ
ません。
 その後、何度も山森先生にお会いできたのですが、それは私のような小
ざかしい人間の、よくお相手できるような人ではありませんでした。何か
巨大な真空を抱えたかのような懐の深い人でした。

 この山森先生が有峯を守っていてくださったことに、富山県民は感謝を
申さねばならないと思います。

 山森先生の訃音を聞き、狼狽して弔問に出かけました。
 御2人のお嬢さん、ご子息にお会いできたことも何かの因縁か思ってい
ます。
                                 
          富山県参与・犬島 肇拝

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◆有峰林道の閉鎖にあたって
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今年の有峰林道は、例年どおり6月1日(昨年は5月24日)に開通し、
11月12日に閉鎖しました。この間、有峰へ起こしになられた多くの皆様が、
有峰の自然を心から堪能されと思っております。この陰には、林道管理者
の日夜分かたぬパトロールやお客様の安全管理があったわけで、ここに皆
様のご努力・ご協力に心から感謝しております。

有峰は、間もなく厳しい冬を迎え、動物たちだけの静かな世界となりま
す。冬が過ぎれば春です。来年の春には、新しい命が芽生え、私たちを新
たな感動の世界へ送り込んでくれるものと、期待で胸がワクワクします。

 有峰森林文化村としましては、多くの有峰ファンとともに、自然豊かな
有峰を守り・育て、次世代へ引き継ぎたいと思っています。有峰村民のご
指導・ご協力を心からお願いいたします。

 来年も、多くの皆様のお越しをお待ちしております。


<有峰森林文化村職員 よせがき>

皆さまの協力に感謝感謝の気持ちを持ち続け、文化村の事業を遂行します。
                     荻沢 明夫

愛着ある有峰でまた楽しみましょう。    宮原 真樹

無事故で終わってよかったです。      水野 博之

怪我もなく 有峰ひたり 冬きたる     河原 芳博

有峰で出会った人たち 心に残る懐かしい思い出 下界で会っても気がつ
かぬ通り過がりかもしれない ここは天の夕顔にいうこの世で最も遠いと
ころ、やはり永遠の別天地なのだ。     北見 健

有峰と一体化でき楽しく学べた半年でした! 山本 章広

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