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有峰村民の皆様と、ほぼ2週間に一度、双方向で交流するメールマガジン
有峰森林文化村新聞 2007年3月31日 第126号
編集/有峰森林文化村会議 編集長/中川正次
(発行日現在の有峰村民人口:552人)
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━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆オレゴン有峰往復書簡第10回目 有峰からオレゴンへ 中川正次
     ロジの上に咲く、サブの花
◆愛着の森対話編第14号の記録  水澄むや二人の影のまぎれなし
◆謝辞  中川正次
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◆オレゴン有峰往復書簡第10回目 有峰からオレゴンへ 中川正次
 ロジの上に咲く、サブの花
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サマータイム制度は、昔から固定されているものと思っていました。今年
から3週間早く、サマータイムになるなんてびっくりしました。

有峰森林文化村では、語り部講を重視しています。一般的には、ワークシ
ョップと呼ばれる学びの場です。そのやり方は、いろんな本が出ています
しセミナーもあります。私は、もっぱら、中野民夫さんに学び、有峰でや
ってきました。先生と生徒という上下関係ではなく、ともに学ぶという精
神で貫かれています。

ともに学ぶことからこそ、「真実とは何か」、「人間とは何か」、「生き
るとは何か」といった問いかけが始まると私は思います。だって、真善美
への姿勢について誰にも負けない自信があるという人がいるとしたら、う
さんくさいし、そんなワークショップに出たくはありません。

その中野流ワークショップのやり方については、中野さんの著書(岩波新
書ワークショップ)を読んでいただくのが一番だと思います。中野さんの
本にさらりとしか書いてなくて、私が工夫していることをお話します。こ
んなことを書いた本は見たことがないし、アメリカで日本人相手のツアー
ガイドもなさっている小杉さんに参考になるかもしれないからです。

語り部講の仕事は、始まる前に8割ほど終わっています。何を目的にする
かの企画、水先案内人(講師のこと)への依頼書送付、下見、時間毎の段
取り表、山菜やきのこの会などでは当選通知・落選通知、参加者募集のち
らし、保険の加入、バス会社への手配、応募してきた人への当日もってく
るものなどを書いたしおり、宿泊先の部屋割り、夕食などの食数を厨房に
つなぐ、領収書つくり、おつりの用意、名札・マジック・CDラジカセの用
意、「ようこそ有峰へ」の板書、餅つきをするんだったら買出し・・・

一個でもぬけると、あちゃということになります。夜、寝てて、保険代理
店に参加人数を報告していないのではないかとビビッて、目が覚めること
があります。朝になって、メールの送信簿を見て、安心する。そんなこと
が何度もありました。電話やファックスは記録が残らないのでだめです。
当方の安心のための保険なのですから。

段取り表はとても大事で、スタッフの一回目の打ち合わせで、ああしてこ
うしてと説明すると、エラーが発見されます。修正して、再度打ち合わせ
して確定させます。それをスタッフ全員が、ポケットにしまいます。その
後も、微調整がいろいろ入ります。そのときは、段取り表を差し替えせず
に、口頭で、こう変更したと伝え、各自、赤ペンを入れます。

語り部講が始まると、予期せぬことが起こります。そんなときにビビッて
は、参加者に不安を与えます。ビビらないためには、準備段階で疲れ果て
ていないことが大事です。にこにこと参加者を迎え入れるためにもです。
とりわけ大事なのは、お金です。お金がわやわやだと、いつしか後ろめた
くなって、仕事にリズムが生まれません。

参加者からお金をもらい、有峰ハウスには料金を払い、買出しのお店には、
もち米、油揚げ、ごぼうなどの材料代を払わなければなりません。有峰グ
ッズを買い上げてつけることもあります。そうして収支がとんとんになら
なければなりません。有峰森林文化村は黒字にする必要はありません。だ
いたい、ひとつの語り部講では千円程度の赤字か黒字を出し、年間で、数
千円の赤字になりました。一回一回の語り部講ごとに、精算して、12円返
しますという必要もなければ、34円足りなかったのでくださいというわけ
にもいきません。参加者のキャンセルはあるものですが、買出しはキャン
セルがないことを前提に終わっていますから、そこでも儲けや損が生じま
す。6月のはじめに買った醤油が10月まで使えるということも当然起こり
ます。もち米は、何キロかの袋に入っているので、前回余れば、買わなく
てよいこともあります。

語り部講の最後は、ふりかえりです。土曜日曜の語り部講だとして、日曜
日の午後2時くらいに参加者は、ふりかえりシートに記入して、全員でふ
りかえりの時間を持った後、バスで帰っていきます。そのあと、スタッフ
全員と水先案内人で、ふりかえりシートを回し読みしながら、反省します。
それを黒板に書き出してKJ法的にまとめます。

そこで、水先案内人には帰っていただいて、いよいよ経理の仕事に入りま
す。有峰ハウスに料金を支払います。グッズの代金をレジスターに入れま
す。そして、これまで一連の金の動きを、伝票に書き、総勘定元帳に転記
し、残高試算表をつくります。残高試算表の現金残高と、実際に金庫にあ
る現金が一致するか確認。ぴたりと合って、バンザーイです。こうして
心地よい疲労感が、スタッフをひたすわけです。

葬式の後、香典開きをして、お金の計算(お坊さんにいくらいくら、寿司
代にいくらいくら、かご盛りにいくらいくら・・・)を記帳して、残高が
一致しないと大変なことになるのととても似ています。

有峰森林文化村では、ワークショップ会計をもうけ、複式簿記できちっと
やっています。パソコン経理する手もあるでしょうが、これは借方、これ
は貸方と意識しながら伝票を書き、総勘定元帳には、やっぱりペン書きし
ないと気合が入りません。こうした一連の流れが、にこにこと参加者を迎
え入れ、予期せぬことが起こってもビビらないコツなのです。大福帳方式
でワークショップをやっているところは続かないと思います。

進行管理表をつくって、チェックしながら語り部講をしてきたのですが、
遅まきながらも、全体のマニュアルをこの2月から3月にかけて作りました。
小杉さんの参考になったかどうかわかりませんが、こうした一連の技術は
ちょっと自慢です。「人知を尽くして天命を待て」という中野民夫さんの
言われるとおりだと思います。このお金とか段取りといった基礎がしっか
りしていないと、ともに学ぶという花は咲かないのです。

以前、厚生省のキャリアの人が富山県庁に出向しておられました。中島誠
さんという人です。その人は、国際会議などをするときは、ロジとサブが
大事だといわれました。

ロジとは、logistics。補給兵站。どんな会場を使い、ホテルはどうする、
配席図をどうする、食事をどうする、土産をどうするといったことです。
サブとは、substance。中味。会議でどんな話をするかです。ロジもサブ
もできなければ、役人としては一人前ではないと言われました。

段取りどうりに行かぬもの、それがロジです。そのときたじろがぬ余裕が
あってこそ、サブがうまくいく可能性が生まれます。「真実とは何か」、
「人間とは何か」、「生きるとは何か」といった本質的な問いかけこそが、
有峰森林文化村語り部講のサブです。このサブへの接近は、ロジの余裕、
リズム感から生まれるのです。

中島さんは、どんな仕事でも、ほんのちょっとした気配りができるかどう
かが、勝負と言われました。ほんのちょっとした気配りを産むのは、ロジ
の余裕、リズム感です。その気配りが、参加者がまた来たくなる気持ちを
抱かせるのだと思います。

私は、第120号で、
---
「本気ですれば大抵のことができる。本気ですると何でも面白い。本気で
していると誰かが助けてくれる。人間を幸福にするために、本気で働いて
いるものは、みんな幸福で、みんな偉い」(後藤静香 本気)

年単位なら、本気で仕事しています。しかし、日単位、分単位だと、本気
度が減っているときもあります。人知を尽くして天命を待たければならな
いのとはわかっていても、分単位で、人知を尽くすことは簡単なことでは
ありません。そんなとき、年単位なら本気だからと、誰かが、小さな失敗
で許してくれていると思われます。
---
と書きました。

その人知を尽くす部分を、私はこのようにやってきたのです。
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◆愛着の森対話編第14号の記録  水澄むや二人の影のまぎれなし
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1 その場所の名前  西谷いのちの沢

2 場所
唐尾峠までの途中の西谷の大きな沢

3 種類と様子     
本流が滝になっており、左岸からは湧き水がソーメン状に滝となって注い
でいる。

4 調べた人の名前 中坪達哉

5 調べた日 2006年9月28日

6 天気 晴れ

7 時間 13時30分頃

8 どうして、この木が気に入りましたか?
有峰森林文化村の基本理念「水と緑といのちの森を永遠に」を最も体感す
る地点ではないかと思うため。西谷の奥の奥、気力、体力が充実していな
いとなかなか行けない急流の神韻たる沢である。急流の流れやまざる水と、
ブナ原生林の緑、そして「いのち」の源ともいうべきところである。

9 この木のそばで口ずさみたくなる歌は何ですか?
はじめて訪れた平成16年10月17日に詠んだ句を思い出す。それほどの難所
である。
木の葉舞う猿(ましら)のごとく岩這えば 達哉

10 この木を見て、気づいたことや感じたことを自由に書いてください。
本日詠んだ句を書きます。
水澄むや二人の影のまぎれなし
猿啼きぬ紅葉明かりを飛び出でて
風も秋巨樹巡礼めきし歩みとも
手をつけば岩の動きて沢の秋
紅葉にも夕べの色のなしとせず

平成16年そして今回と、ご案内いただいた中川正次さんに感謝いたします。
オカリナの音は胸にしみました。
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◆謝辞  中川正次
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4月1日の異動で、有峰を去ることになりました。日本海学という、有峰に
は深いつながりのある職場に行きます。長い間大変お世話になりました。

平成14年、有峰森林文化村の開村当初、「メールマガジンを出そうと思う
んですが、どれくらいの頻度で出せばいいですか」と、富山大学の黒田助
教授に相談しました。「メルマガは一月に一度だと忘れられる。2週間に
一度でしょうね」と、あっさり言われました。

新聞を出さなければならないということで、自分を追い込んできました。
その気合がなければ、人とのつながりや新しいアイデアも浮かばなかった
と思います。

以来、126回。思えば遠くへきたもんだの感慨でいっぱいです。ご愛読あ
りがとうございました。
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