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有峰村民の皆様と、ほぼ2週間に一度、双方向で交流するメールマガジン
有峰森林文化村新聞 2006年1月7日 第94号
編集/有峰森林文化村会議 編集長/中川正次
(発行日現在の有峰村民人口:500人)
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━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆1月4日現在の積雪は、4メートル6センチメートル
◆「俗化させず大衆の山とする」挑戦を継承したい   中川正次
◆石川邦夫さんの死を悼む
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◆1月4日現在の積雪は、4メートル6センチメートル
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北陸電力によりますと、1月4日現在、猪根平の積雪計で、4メートル6セン
チメートルの積雪だそうです。
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◆「俗化させず大衆の山とする」挑戦を継承したい   中川正次
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有峰の話をしていると、いろんな人から、「有峰を俗化させてもらいたく
ない」という話を聞きます。どうして有峰の俗化は困るという意見が共通
して出てくるのでしょうか。

昭和32年発行の「有峯を探る」という本で、北日本新聞社政治部長の深山
栄さんが、「無限に拓ける国際観光地」という文章を書いています。その
中では、

さらに夢を語らせてもらうとすれば有峯から薬師までバスで行ける
ようにしたいということだ。この自動車コースはまさに快適だろう。
薬師まで行けばあとは五色ケ原へもゆける。さらに立山までも延ば
したい。(中略)もちろん国立公園法とやらいう厄介なシロモノも
あり、厚生省もなかなかいい顔をしないだろうが、俗化でなく、大
衆の山とするためには少しぐらいは太ツ腹であらねばなるまい。

第二に、昭和56年に北陸電力が作った「有峰と常願寺川」の146ページに
次の文章があります。

有峰のもつ神秘性を失わせずに、俗化しない"大衆の山"とするために、
当事者たちの豊かな発想が期待される。

第三に、私は、立山黒部アルペンルートを推進した立山黒部貫光の佐伯宗
義さんの秘書だった人から、こんな話を聞きました。

オヤジは、いつも「俗化させず大衆の山とする」ということを口が酸
っぱくなるほど、言っていた。

これら三つの事実から、「俗化させてはならない」だけでなく、「大衆の
山とする」と組み合わされたものの考え方であったこと。その組み合わせ
が、戦後、受け継がれてきた立山連峰に対する県民の思いであるというこ
とがわかります。さらには、深山さんの文章からわかるように、俗化させ
ず大衆の山とするという考え方は、振幅が大きく、自然をずたずたにする
開発志向を含みかねないことにも注意が必要です。

こんな話をすると、「金儲けをしなければいけない以上、俗化させないな
んて無理じゃないか」と思考停止をされる方が大勢おられます。そんなこ
とでいいのかと私は思います。観光でお金を落としてもらおうなどという
ことが語られる時代は、昭和30年代より思想的に貧相な時代であると思い
ます。

「俗化させない」と「大衆の山にする」。これらは矛盾します。「俗化さ
せず大衆の山とする」という言葉の中には、矛盾を統合させようとする挑
戦があります。龍樹、聖徳太子、最澄と流れる大乗仏教のことが意識され
ていたにちがいありません。さらに、親鸞、蓮如のことも。

私は、太宰治の「竹青」という作品が好きです(新潮文庫 お伽草子P21
3) 。

人間は一生、人間の愛憎の中で苦しまなければならぬものです。のが
れ出ることは出来ません。忍んで、努力を積むだけです。学問も結構
ですが、やたら脱俗を衒うのは卑怯です。もっと、むきになって、こ
の俗世間を愛惜し、愁殺し、一生そこに没頭してみて下さい。神は、
そのような人間の姿を一ばん愛しています。

聖と俗の境界に呻吟する姿に対する愛惜こそが、人生の本質なのだと思い
ます。俗化させたくないという願いと、大衆の山にしたいという願い。こ
れらを両立させようとした知の延長に我々は立たなければならないと思い
ます。深山さんのような考え方をも排除できないことを意識しつつも。

世間は、最近、正か邪か、敵か味方かの単純なものの見方に堕しています。
リモコンでさっさと切り替わってしまうテレビのチャンネルで繰り広げら
れている視聴率競争。アメリカの覇権主義。

これには、私は知的興奮を感じません。有峰の遊歩道を並んで歩く。湖畔
に並んで座る。小さな炎を車座に囲んで、全身全霊を傾けて話を聞くとい
った学びの方法を築きたいと思います。そのことによって、昭和30年代の
「有峰も含めた立山連峰全体において俗化させず大衆の山とする」という
原点に戻りたいと思います。
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◆石川邦夫さんの死を悼む
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有峰森林レンジャーをしていただいていた石川邦夫さんが、1月2日に亡く
なられました。68歳の若さでした。

石川さんは、レンジャー活動にいつも熱心に取り組んでおられ、巡回が終
わると丁寧なレポートを書いてくださいました。
また、アサギマダラとデートなど、ねいの里の行事が有峰で開かれる場合、
いきいきとしておられたのが、今でも目に浮かびます。
有峰トランプのツキノワグマ(ハートのK)の写真は、石川さんが撮影さ
れたものです。
http://www.arimine.net/sakul/garou/photo/kuma_s.jpg
ビジターセンターには、石川さんが作られたアルバム「先住民有峰の熊さ
ん」「森の中の生きものたち」を展示しております。

心から、ご冥福を祈ります。
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