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ありみネット http://www.arimine.net/

有峰村民の皆様と、ほぼ2週間に一度、双方向で交流するメールマガジン
有峰森林文化村新聞 2005年1月8日 第67号
編集/有峰森林文化村会議 編集長/中川正次
(発行日現在の有峰村民人口:379人)
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━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆有峰学を目指してー有峰なぜ?なに?博物館の充実ー  中川正次
◆「有峰俳壇」開設にあたって        富山市・中坪 達哉
◆山岳警備隊員の真意            所沢市・五十嶋一晃
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◆有峰学を目指してー有峰なぜ?なに?博物館の充実ー  中川正次
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ありみネットの中の「有峰なぜ?なに?博物館」に、有峰トランプの各
カードを載せました。さらに、みなさんの質問・情報をもとに、編集部で
調査した内容を報告することにいたします。そこに至るまでの経過を説明
します。

今から4年ほど前、有峰森林文化村構想を練っているとき、ある方から、
自然と歴史を融合した有峰学を考えたらどうかという提案をいただきまし
た。とてもとてもと、お答えしましたけれども、このことは、私の潜在意
識に残った課題でした。

昨年、有峰トランプを作りました。トランプの七並べなどを通じて、有峰
を多角的にわかってもらえたらという発想です。有峰ハウスでは、お客様
にトランプを引いていただいて、そのトランプについて説明するという絵
解きも行っています。トランプの編集作業、絵解きの勉強などを通じて、
わかったことを、柳川さんに書き留めてもらいました。絵解きの虎の巻に
しようと思ったからです。

そのうちに、そのメモを、「有峰なぜ?なに?博物館」に公開する。あり
みネットを見た人からの質問や情報に、編集部で調べて報告することで、
双方向性の有峰百科事典を作り上げていくというアイデアが浮かびました。

有峰学のことを考えています。

ディベートに代表されるような対立を際立たせるスタイルではなく、遊歩
道を並んで歩く。湖畔に並んで座る。小さな炎を車座に囲んで、全身全霊
を傾けて話を聞くといった学びー有峰逍遥学派を目指すことは、有峰学の
ひとつの姿です。

そしてまた、有峰トランプを種に双方向性の有峰百科事典を作り上げると
いうのも有峰学のもうひとつの姿です。

この有峰学を大きく育てたいと思っています。
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◆「有峰俳壇」開設にあたって      富山市・中坪 達哉
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俳句は、私たちを取り巻く美しい自然とそれに育(はぐく)まれたそれぞ
れの営みを、四季の移ろいの中で詠んでゆく十七音の文芸です。世界でも
類のない季語と最短詩型が瞬間的に生み出すイメージ力の大きさが注目さ
れ、俳句は世界各国に普及しつつあります。

有峰森林文化村の開村以来、俳句で有峰を詠(よ)む活動が続けられてい
ることは意義深いものがあります。今年から有峰ビジターセンター内に設
けられた「投句ボックス」に寄せられた作品からも、有峰の自然と向き合
った方々の熱い思いが伝わってきます。

美しいが厳しくもある自然を見つめ、人間や動物のみならず、あらゆるも
のを「生き物」のように捉(とら)えようとする俳句のこころは、まさに
有峰森林文化村の「水と緑といのちの森を永遠に」という基本理念と通じ
るものがあります。

有峰のすばらしさが俳句作品を作ることで一層思い出深いものとなり、ま
たそれらが作品集としてまとめられ、有峰の魅力発信の一助になるならば
望外の幸いです。

平成16年12月

編集部注
ありみネットの中の、文化サークル活動所に「有峰俳壇」のコーナーを設
けました。有峰ビジターセンターの俳句ポストに投函されたり、吟行会で
生まれた俳句を、講師に選んでいただいたものをデータベース化して、季
節ごと、作成年ごと、作者ごとなどの切り口で公開するものです。富山県
俳句連盟副会長の中坪さんに監修をお願いしております。
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◆山岳警備隊員の真意            所沢市・五十嶋一晃
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夏山最盛期が終わった9月初旬に、北アルプスの太郎平小屋にある富山県
警山岳警備隊員の部屋で、妙な木板が目についた。それは「祈 登山安全
 無事故」と書かれたものである。分厚い大きな木板に、小さな八文字が
記されているので、変に思って裏を返してみると「大沢野警察署太郎平山
岳警備臨時派出所」と書かれた門標で、山岳警備隊員が小屋に常駐してい
るときには、小屋の玄関に掲げてあるものであった。シーズンが終わった
ので部屋にしまったもので、警備隊員以外は表札の裏面の文字をあまり知
らない。

この文字に表されている精神は、山岳警備隊員の祈りを込めた本音の心で
あろう。木板を眺めていたら、隊員の活動が目に浮かび、自然に熱いもの
がこみ上げてきた。

山岳警備隊の活動については、多くの書籍が出版され、映像でも遭難救助
の場面が華々しく放映されている。しかし、山岳警備隊員が日常行ってい
る遭難防止のための地味な活動がある。その一端を体験したので報告しよ
う。

数年前の夏山で、80歳を越えた登山者が槍から立山のダイヤモンド・コー
スを縦走した。当夏私は太郎平小屋から黒部五郎小舎を経て五郎沢から黒
部の源流を下り、薬師沢小屋へ入ったが、予定よりも早く着いたので昼寝
をしていた。すると私宛に遭難対策用無線が入る。内容は80歳くらいの老
人と孫の中学生が歩いているのに会ったか、その場所は、その時の状況は、
と次から次へと質問が飛ぶ。

黒部五郎のカールのジグザグの登りで会ったこと、20歩くらい歩いては休
憩をとっていたこと、空身であったこと、中学生の男の子がかなり先行し
て歩いていたことなどを報告し、太郎平には日暮れ近くになるのではなか
ろうか、という私の推測も加えた。当日、太郎平小屋からはボランティア
で活動している薬師岳方面山岳遭難対策協議会の皆さんが、上ノ岳の麓ま
でさりげなく救援に出ている。

山岳警備隊は、老人の登山者については三俣山荘から雄山までの足取りを
すべて把握していた。各山小屋からは無線によって情報を集める。小屋に
到着したとき、食事のこと、小屋を出発したときの模様などを探り、縦走
路途中での模様は登山者から聞き取りを行っていた。私への無線もその一
環だ。

このように、老人の登山者には山岳警備隊員が情報網を張って、その足取
りを把握しているという活動を、縦走している登山者はもちろん本人も知
らない。方々に迷惑をかける登山者は別として、老人の楽しみである登山
を応援したい、育みたいと考えている姿勢ではなかろうか。登山者にとっ
ては安心だ。

もう一点、今夏(平成13年−2001)の体験を取り上げたい。8月24日に山
岳警備隊からスゴ乗越小屋へ遭難対策用の無線が入る。「越中沢岳からス
ゴノ頭にかけたところに、靴のようなものが入ったビニール袋がハイマツ
に縛ってある、という登山者からの情報が入った。とりあえず小屋でその
モノを探し出し、状況を判断して回収してほしい。場合によっては警備隊
員が出動する」という内容である。警備隊では万一人命にかかわることが
ないだろうかと心配していたようだ。

私はスゴ乗越小屋にいたので、早速警備隊の指令によって行動した。モノ
が置いてあった状況から判断すると、特に問題として取り上げるようなこ
とではなかった。スゴ乗越の最低鞍部から越中沢岳への急坂を登ると最初
の小ピークに達する。そこは眺めがよく5、6人が座れる休憩所のようなと
ころだ。そこのハイマツの枯れた根っこに、ビニール袋に包まれたウオー
キング・シューズが置かれていた。中身の点検を行い、その位置や状態、
日時の経過などを判断すると、置いていった登山者は「まだ靴が使えるの
でどなたか使ってください。重いので置いて行きます」という単純な思い
つきで置いたものであると推測し回収した。

このように山岳警備隊員は登山者が安全であるよう常に心がけ、こんな些
細なことにまで遭難防止の対策を講じている。

『アルプス交番勤務を命ず』と題する著書を著した元富山県山岳警備隊隊
長の谷口凱夫氏は、その中で「私の内心は『日本一の評価より遭難事故ゼ
ロの悲願を達成したい』というのが偽らない気持ちです」と述べている。
その気持ちはよく理解できる。

谷口氏は10年前ぐらい前に、日本山岳会のルームで、厳冬期の剱岳八ツ峰
における遭難救助活動の映写と講演を行っている。会場では大学山岳部の
部員を中心に、立って視聴している会員が多数いた。

氏は「みなさんは若く、これからの日本の登山界を背負って立つ人たちで
す。もっともっと先鋭的な登山を行ってほしい」という主旨で講演を結ん
だ。若い青年へは相当活発な登山を奨励していたが、若いときに登山の基
本を体得する、それが安全登山に繋がる本筋であると、私は思う。
((社)日本山岳会会報『山』 NO.678 2001.11発行 掲載)

編集部注
この文章は、五十嶋一晃著「岳は日に五たび色がかわる」(2004.11.27
発行)より、許可を得て掲載しました。
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